今日は裏々山で課外授業。
生徒に疲れが見え始めた頃、ようやく休憩となり、僕は1人木陰で息を整えていた。
「川西左近先輩っ」
「乱太郎」
すると、突然後ろから勢いよく抱きつく見知った後輩に、思わず前に倒れそうになるのを耐え、辛口になりそうな言葉を飲み込む。
「こんな場所で左近先輩に会えるなんて、とっても嬉しいです!」
すべては惚れた弱み。
この言葉と日だまりのように温かな笑顔で許してしまう。
「………僕も」
「え、何ですか?」
後ろで僕の背中に顔を埋めている乱太郎には聞こえない。
「何でもない。アホなんだから、走ったら転ぶぞって言ったんだよ」
照れ隠しに嫌味をはくと、乱太郎が頬を膨らませて拗ねる。
「ヒドいですよ。だって…左近先輩が見えたから早く追いつきたかったんですもん」
どうやら1年は組も近くで授業らしい。
「分かった分かった」
膝に向かい合わせで座らせると、宥めるように頭を撫でる。
「ん…左近先輩」
ギュッ、と僕の首にしがみつき、肩口に頭を乗せて甘えた声を漏らされると…その、僕も学年はまだ低いけど立派に男なわけで。
「左近先輩…あの…今、すごく接吻したいです」
「なっ?!」
時々妙に積極的な恋人に、僕の方が驚かされる。
「ダメ…ですか?」
「いや、ダメではないが…誰かに見られるかも知れないぞ?」
耳まで赤く染めると小さく首を縦に振り、乱太郎自ら僕の口に柔らかいそれを当てる。
角度を変えて、何度も何度も重ねる。
「んっ、ふ……んぅ…」
その内、お互いの息遣いが目立つようになると、集合を知らせる声でハッと我に返る。
「ヤバ。今授業中だった」
「あっ! 僕もそろそろ行かないと」
急いでいるような口調とは裏腹に、寂しそうな表情と、未だに離そうとしない小さな手。
その手をまとめてギュッと握り、目線を外して遠い空を見つめながら口を開く。
「乱太郎…授業終わったらさ…一緒に帰るか」
「…っ……はいっ!」
満面の笑みなのに、泣き顔にも見える。
「それじゃあ、また後でな」
「はい…あの、左近先輩」
何か言いたげな乱太郎に気づいて軽い口づけをする。
「へへ…大好き」
「僕も好きだよ」
最後にギュッと抱き合って、お互い呼ばれる方へ足を進める。
元の場所に戻ると、声をかけるよりも早く、友人の池田三郎次が不思議そうに目を細めて僕を見つめる。
「何かさ、お前機嫌良くない?」
「…気のせいだろ」
悪いけど、三郎次にも教えられないね。
僕と乱太郎だけの、秘密の時間だから。
*END*
思った以上に左近が優しいwwもっと左近はツンデレにしたかったけど、とりあえず、今回は甘やかしてもらいました(^^)
2年×乱とか、3年×乱も良いなぁvvV
[4回]
PR