「三郎はまた僕の顔を借りて…まったく」
とある放課後、中庭で同じ5年ろ組の鉢屋三郎の変装にため息をついていると、パタパタと足音が近づく。

「雷蔵せんぱーい」
叫びながら、そのまま勢いよく自分に抱きつくのは、１年は組で恋人の乱太郎。
まだ１年生だから下手に手は出せないけれど、今はこういうじゃれあいで十分満足できるくらい可愛い可愛い、目に入れても全く痛くないくらい可愛い恋人。
入れられるなら、本当に目に入れてしまっておきたいよ。

「雷蔵ってばいーなー。私にも間違って乱太郎が抱きついてくれないかなぁ」
羨ましそうに三郎が眺めていると、それに気づいた乱太郎が僕から離れてニッコリ笑う。
「間違えませんよ。だって、雷蔵先輩と鉢屋先輩は違いますから」
「…乱太郎」
ジーン、と感動していると、横抱きで再度抱きつく乱太郎。
僕が頭を撫でると、目を細めて気持ち良さそうに喉を鳴らす。

「……なんか、今のセリフって聞きようによっては俺もおいしいかも」
ん？　三郎ってば何言ってるの。
頭を撫でながら乱太郎の言葉を頭の中で繰り返す。

僕と三郎は違う。

一見僕のことが好きだからと取れるけど…確かに、三郎からも同じようにとれる発言。
いやいやいや、でも乱太郎が好きなのは僕だから！
自分の考えを振り切るように頭を振っていると、乱太郎の悲鳴が。

「やーっ！　鉢屋先輩やめてください」
「何で。雷蔵と同じ顔だよ」
「でも、僕は雷蔵先輩が好きなんです」
手を伸ばして助けを求める乱太郎を見て我に返り、慌てて三郎から奪い返す。
「ちょっと、乱太郎が嫌がってるでしょ」
「ちぇー。まぁいいや。まだ時間はたっぷりあるから、これからじっくりね」
「…じっくり何？」
じと、とした目で睨む。
「別にー。今まで以上に雷蔵の変装に力を入れようかなと思ってね」
ニィっと不気味に笑う三郎に危険を感じて、乱太郎をギュッと抱きしめる。

「雷蔵先輩？」
僕の行動を不思議に感じた乱太郎が、純粋な瞳で上目遣いで見つめる。
「らんたろー」
お願いだから、三郎の魔の手にかからないでね。
いや、そうなった時は僕が守るけど。
もちろんフルボッコでね。

「乱太郎。すぐに私を好きにさせてあげるからね」
「なりません！　僕が好きなのはこれからもずっと雷蔵先輩ですっ！」
「三郎。早死にしたくなかったらその手を離してよね」
「いいじゃんケチー」
「ケチじゃない」
「ふえーん。雷蔵せんぱーい」

いつも通りの光景。



＊END＊

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あっぶない！更新宣言しておきながら１日で破るところだったｗｗ
雷蔵と三郎が乱太郎を取り合うのにしようか迷ったけど、長くなりそうだったからこっちにして良かった。
どうしても三郎がいると雷蔵を黒くしたくなる…つか、基本乱太郎以外は基本真っ黒であってほしい(＾＾)

[9回]